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未来担う子どもと共に

 参加国別に、それぞれの国のユニホームを着た少年チームが入場行進をした66年イングランド大会や、70年メキシコ大会。平和の象徴として白いハトを図案化した、開催地バルセロナ出身の天才画家ピカソにちなんで、白い服装の少年たちが白いハトをピッチに描いた82年スペイン大会。ワールドカップの開会式には、未来を担う子どもたちが登場して開幕を盛り上げてきた。
 98年フランス大会では全会場で、各試合の1時間半前に少年チームの試合が行われ、フランス国内と海外から選考された240チームがワールドカップのピッチの感触を味わった。これは大会組織委員会の故サストル会長の「大会は子どもと共に」という願いが実現したものだった。
 86年メキシコ大会のとき、ベルギー代表がストリートチルドレンの多いのに驚き、選手たちの募金で、プエブラ市に子どもたちの家を建てた。そこに住む30人ばかりの子どもたちは90年イタリア大会のとき、遠いメキシコからベルギー代表に声援を送った。
 ドイツ代表も、やはりメキシコ大会の一会場となったケレタロ市に同様の施設をつくった。ドイツ協会(DFB)も応援して「DFBのSOS(緊急)キンダードルフ(子どもの村)」と名付けて運営を続けている。
 ワールドカップの主催者のFIFA(国際サッカー連盟)も、世界中で「SOSチルドレンズ・ヴィレッジ」活動を展開している。その基金確保のために、ワールドカップ優勝チーム対世界選抜戦を開催している。
 昨年8月16日にフランスのマルセイユであった試合には、ジダン、アンリらのフランス代表、バッジオ(イタリア)、ドゥンガ(ブラジル)ら世界のスターが参加して、6万人の観衆を集めた。その収入200万ドルが基金となっただけでなく、当日の朝、選手たちがマルセイユの「子どもの村」を訪れて子どもたちを励ました。
 ワールドカップのスターは世界中の子どもたちのあこがれだが、彼らもまた世界の子どものことを忘れてはいない。

(朝日新聞 2001年11月13日)

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