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ピッチの評価、芝が握る

 7日に埼玉スタジアム2001であったキリンチャレンジカップの日本対イタリア戦。両チームの選手は、ターンやシュートで踏み込むたびに、芝生がベロリとはがれて足を取られていた。これを見ていて思い出したのが、78年のワールドカップ(W杯)・アルゼンチン大会のマルデルプラタのピッチだった。
 この有名な保養地のグラウンドは芝の根付きが悪かったうえ、当日の雨もあって、ブラジル対スウェーデン戦では、あちこちで芝生がはがれた。滑って転倒した若きジーコが、怒って芝をけ飛ばす場面もあった。
 今は立派になったが、東京の国立競技場のピッチも以前はひどいものだった。
 使用回数が多いのに十分な手入れをしなかったためで、95年の第16回トヨタカップでは、アヤックス(オランダ)のファンファール監督に「このようなグラウンドで、世界の一流選手が集まる大会を開くのは無理だ」とまで言われたものだ。
 なにしろ、あのマラドーナがプレーした79年の第2回世界ユース大会のときの国際サッカー連盟(FIFA)の事前調査の際、国立競技場の評価は、3段階の最低だった。
 そのとき、神戸会場だった中央球技場(神戸ウイングスタジアムの前身)の評価は、最高の「エクセレント」だった。69年の完成以来、「芝づくりの名人」福田正夫さん(92)がピッチに情熱を注いできたためで、ペレやベッケンバウアー、クライフら大スターからも「すばらしい芝生」とほめられた。
 02年W杯のために新設されたり、大改修されたりしたスタジアムの芝生は、マルデルプラタの例もあり、心配がつきものだ。とくに神戸ウイングスタジアムの場合、日本の10会場の中で最も遅く完成しただけに、なおさらだ。しかし、中央球技場以来の経験に加えて新しい技術も導入されており、必ずや「エクセレント」の評価になると思う。
 02年W杯の会場で最も早く96年に完成した大阪の長居陸上競技場は、すでにJリーグや日本代表の国際試合で上々の評価を得ている。W杯の開催時期は、冬芝から夏芝への切り替え期にあたるが、他の会場に比べて早くつくられ、実績もあることから長居陸上競技場では、切り替えをしてもしなくても問題はない、と自信を持っている。

(朝日新聞 2001年11月27日)

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