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靴は選手たちの「兵器」

 51年の第1回アジア大会(インド・ニューデリー)で優勝したインドチームのセンターフォワードの選手は、裸足で巧みにドリブルし、強いシュートを放った。本人は「靴を履くより、この方がいい」と言っていたそうだが、ほどなく裸足の出場は禁止となった。
 現行の競技規則(LAW OF THE GAME)では、第4条で「競技者が着用しなければならない基本的な用具は、ジャージーまたはシャツ、ショーツ、ストッキング、すね当て、および靴である」とし、「競技者は自分自身あるいは他の競技者に危険となるような用具やその他のものをつけてはならない(宝石類を含む)」と記している。
 イングランドでは昔、サッカー靴をブーツと呼び、規則書の用語にも使われていた。くるぶしが隠れる深い靴(ブーツ)だったからである。日本でも50年代まではブーツ式で、つま先の部分に固い皮を入れるのが普通だった。
 50年のブラジル・ワールドカップ(W杯)で、欧州の選手たちは、足技の巧みなブラジル選手が、浅い柔らかい靴を使用しているのを知り、シューズ(短靴型)を履くようになった。51年秋の週刊アサヒスポーツには、戦後初めて欧州から来日したヘルシングボリ・クラブ(スウェーデン)の選手が、シューズを使用していると伝えている。
 54年のW杯では、ソール(靴の裏)につける滑り止めのためのスタッドが、それまでのクギで打ち付けたものから、ネジ込み型に変わった。この「新兵器」により、ピッチのコンディションによってスタッドの高さを規則の範囲で調節することが可能になった。
 いまや、技術の進歩と運動量の増大で、「丈夫で足にフィットして軽い靴」を追求する開発競争がどんどん進められている。もし従来のものより20グラム軽くすれば、1万歩走る選手は90分間で200キログラムの負担の軽減になるというのだ。
 今回のW杯では、大阪や神戸のピッチにどのような「新兵器」が現れるだろうか。(なお、サッカー靴のことをスパイクと呼ぶ人がいるがこれは間違い。念のため)

(朝日新聞2002年2月19日)

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