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16強で止まった日

前半のシュートは2本

 雨の激しくなった宮城スタジアムは、前半1-0、トルコのリードで45分を終わった。12分の右CKでユミト・ダバラのヘディングのゴールのあとは、どちらにしても新たな得点は生まれなかった。
 日本の短いパスをつないでの攻め込みは、何回かゴール前へボールを送ることはできたが、シュートは2本だけだった。
 少ないシュートの1本は、中田英
―西澤―アレックスと渡って、アレックスが得意の左足で蹴ったが、GKリュストゥに防がれた。
 アレックスはこのあと、相手のファウルでFKのチャンスをもらった。中央、左寄りのペナルティー・エリア外8メートルの地点からのFKは、中田が蹴ると見せかけて、小野が短
いパスを出して稲本にキックさせる狙いだったが、稲本のスタートが遅く、小野のスローなボールは相手DFの突進に阻まれて、シュートすることができなかった。
 手なれたメンバーの停止球(FK)からのトリックプレーでも、こういうことがある。西澤とアレックスという第1ラウンドの未経験者を配して、これまでと違ったフォーメーションをとれば、パスはつながっても、重要な局面でのあうんの呼吸といったものは生まれがたい。

ゴール左角をたたいたFK

 それでも、決定的な場面は40分過ぎにやっできた。中田浩のロングボールをジャンプして受ける中田英を、背後からアルパイが押し倒してエリアすぐ外(正面やや左)のFKとなった。蹴ったのは小野でも中田英でもなく、アレックス。ボールのすぐ近くにいた彼の短い助走からの左足シュートは、ゴール左角を直撃してはね返った。
 いいシュートだったが、もうボール1個分、下に飛んでいたら…。
 43分、アレックスが中央右寄りで倒され、小野のFKにアレックスが飛び込んだがCKとなってしまった。

攻め手を変えたが…

 後半は、そのアレックスが退いて、鈴木が投入され、また稲本に代わって市川が登場した。
 2トップの慣れた形になって、シュートチャンスがやってくる。ロングボールに対する相手のクリアを拾って、中田英のシュートが飛んだのが52分。DFに当たってスピードの変化したボールをGKがキャッチする。GKとディフェンス・ラインとの間に、明神からポールが出たが、それを相手がクリアした。オウン・ゴールにもなりかねない体勢で、日本側はその期待にどよめいた。
 押し込まれていたトルコが、攻撃に出て、ハサン・サスがドリブルでシュートまでもっていく。楢崎の正面へのグラウンダーだったが、個人的なカを見せた。
 市川からのクロスを西澤がヘディングシュート(GKキャッチ)。明神のミドルシュート(左ポスト外へ)と、61分、63分と日本のシュートチャンスが生まれる。
 少しずつ、互いの動きの量とスピードが落ち、それが日本のほうに有利になるように見えたが、ユミト・ダバラの交代に、ニハト・カフベチが入った75分ごろから、再びトルコの守りがしっかりしてきた。

森島を投入したのが…

 西澤の、この日2本目のシュートがバーを越えてから5分後に、森島が投入された(市川との交代)。第2列、あるいは第3列からの飛び出しでは、第一人者といっていい彼だが、あと5分というところでは、果たしてうまくいくかどうか――。
 その森島が右サイドへ出て、ペナルティー・エリアへ入ろうとしたのをファウルで止めたのは、ストライカーのハカン・シュキルだった。
 トルコの守備の強さは、ロスタイムの3分を加えた93分間をとうとう無失点で切り抜けた。
 イタリアの名レフェリー、コリーナ氏の笛が鳴って、日本代表のワールドカップは終わった。
 日本チームのメンバー編成は、そのスターティング・ラインアップを見たときから、疑問を持った人も多いだろう。しかし、それについてのトルシエの考えは先々、追求していくだろうし、また本人が語るだろう。
 私個人とすれば、こういう守りのの強いチーム――どういう形やメンバーであっても――日本のFWのカだけではなかなかゴールを取れない相手に対しては、第2、第3列の飛び出しがなければ、その守りを崩しにくい。となれば、森島を初めから、あるいは、もっと早くから投入するものだと思っていたのに――。
 16強で足踏みをしてしまった選手たちの気持ちを考えながらも、つい、不満もわいてくる。2002年6月18日は、振り返るのもつらい日となるだろう。

(週刊サッカーマガジン2003年6月10日号)

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