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ロナウジーニヨのドリブルコース

ブラジルの同点ゴール

 昨年の大会開幕のときから始めたこの旅は、ときに番外編を交えながら、前回(9月30日号)で41回目となった。このときは、セネガル戦についての番外編だったから、2002年大会については9月16日号のイングランドVSブラジル(6月21日)の前半の記述が一番近いものになる。ブラジルの同点ゴール、あのロナウジーニョの見事なドリブルと、横パスを受けたリバウドのシュートのシーン。つまりロナウジーニョが中盤でボールを受ける
前の両チームのボールの奪い合いについての記述だった。
 この場面は故障の足をかばったベッカムが、ロベ・カルのスライディング・タックルをジャンプして避けたため、ブラジルがボールを取ったシーン。そしてロナウジーニョが有利な体勢でボールを受けたところが、この試合の大きな岐路となったことを語っているのだが、面白いもので、昔のサッカー仲間、東西対抗の西軍でプレーをした友人たちとの昼食会で話をしたら、「そう、あそこで跳んだのはなあ」と感じたのは、HB(守備的MF)やDFたち。「そんな場面があったか、見逃した」と言うのはFWだった。

斜行、直進、フェイントとパス

 この同点ゴールの2番目のポイントは、ロナウジーニョのドリブルだが、その中でも圧巻は、外へのフェイントで間合いを詰めにきたシンクレアの逆を取り、直進したことだ。
 テレビのスローのリピートを見ると、ハーフウェー・ライン手前3メートルで、走り上がってボールを取ったロナウジーニョは、スピードを保ちつつ、始め右に斜行し、5〜6歩でコールヘ直進する。センターサークルを過ぎたところで、間合いを詰めてくるコールに対し、まず右に小さくけん制し、なお直進しつつ、右足でボールをまたぐフェイントのあと、外へ対応しようとして体勢を崩したコールの内側を、−気にスピードを上げて駆け抜ける。リバウドが右に、ロナウドが左に開いたため、相手のセンターバックは、それぞれをマークするため、ロナウジーニョから、27〜28メートルのゴールまで、ぽっかりと空間ができた。
 コールの追撃を受けながらペナルティー・エリアに迫るロナウジーニョに、二人のセンターバックが中にしぼってきたと見て、ロナウジーニョは右足のアウト
サイドでリバウドヘパスを出した。
 やわらかいパスをノーマークで受けたリバウドが失敗することはない。右半身にステップを踏み、得意の左足のサイドキックで、ゴール左下すみにシュートを
送り込んだ。
 このロナウジーニョは、後半早々に、スコールズがクレベルソンを倒して得た35メートルのFKを直接決めるという、この日、二度自のビッグプレーをやってのけた。GKシーマンのミスという見方もできるが、あのロナウジーニョのスリムな体から35メートルのコントロールキックがゴールヘ入ってゆくとは――まことにサッカーでは、何が起こるか分か
らない。そのロナウジーニョが、まったくつまらないファウルで退場して10人になったが、イングランドには回復する力はなかった。

(週刊サッカーマガジン2003年10月14日号)

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