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圧倒的な空中戦、ドイツ―米国

中田のパスとレイナのパス

 チュニジア戦に続いて、対ルーマニアでも柳沢がゴールした。何年か前に、彼が急成長したとき、この雑誌で釜本邦茂と比べて書けと依頼されて以来、いつも気になっていたプレーヤーだから、今回の連続ゴールはDFラインの背後ヘパスを送り、そのボールのワンバウンドを柳沢が左足で叩いたのだが、中田のボールの持ち方のうまさと、右へ開いた高原へではなく、柳沢の飛び出しを感じてタテにパスを、しかも、ふわりと送った狙いと、技術にあらためて感嘆した。
 1989年のミラノでの欧州スーパーカップでACミランのライカールトが、後ろ向きのボレーでスルーパスを出したのを見ながら、オフサイド・トラップを破る選手の工夫を知ったが、今回の中田と柳沢の「あうん」の呼吸もまさにそれだった。
 さて、連載のワールドカップの旅、前回で紹介したドイツ―米国戦の前半30分の米国のチャンスをドイツGKカーンが防いだ場面も、やはり、米国のレイナのスルーパスにドノバンが左サイドから走りこんで生まれたもの。そのレイナがやや斜め後方を向いたドリブルからのスルーパスが実に効果的だった。それでもドイツのリンケの懸命の追走のためか、ドノバンのボールコントロールが乱れ、ボールヘの踏み込みが遠くなって、左足のキックはカーンを破るには余裕がなかった。

バラックのジャンプ・ヘディング

“ピンチの後にチャンスあり”
 ドイツの動きの一つひとつにスピードと激しさが増し、右のフリングスのFK、左のツィーゲのロングスロー、さらにシュナイダーの右CKと、たて続けに左、右から米国のゴール前へ高いボールが送られる。バラックのヘッドは左にそれ、ノイビルのオーバーヘッドシュートはDFの顔に当たり……。壮絶なぶつかり合いの中で37分に、またまた右サイドの好
位置でドイツにFKのチャンスが巡ってきた。
 右タッチラインから7メートル内側、ゴールラインから20メートル。今度は左利きのツィーゲが蹴った。彼が左足で蹴ったボールは高く、早く、ゴール正面へ飛び、それにバラックが合わせた。長身で、しかも体の強い彼のジャンプはひときわ高く、長い滞空時間で待ち受け、頭でとらえて方向を変えたボールの勢いは強く、GKフリーデルのすぐ近くだったが右手の下をすり抜けてしまった。1−0。

(週刊サッカーマガジン2003年11月4日号)

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