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レイナ、ドノバン、サネーの頑張りも及ばず、ドイツ―米国

甲子園とサッカーと日の丸

「甲子園の雰囲気は、国立で日本代表が試合するときと同じですネ」
 タイガース取材の手伝いに出掛けた、あるサッカー記者がこう言っていた。
 何ごともサッカーを基準に見てくれるのは結構だが、スポーツの歴史となれば甲子園球場でのタイガースの声援の方がずい分古い。東京への対抗意識を背景に地域感情に密着したタイガース人気についても、しっかり理解してほしいもの。日本で、まだまだ根強い野球(ベースボール)についても、そして、その根強さの中の“危うさ”に気付いて“オリンピック”にも目を向けさせようとする長嶋茂雄たち「日の丸チーム」について――思いをめぐらすことはサッカーを書く者にとって決してマイナスではないハズなのだが…。

ドイツ後半のピンチ

 さて2002年のワールドカップ、準々決勝のドイツ―米国戦。ドイツの攻撃をよく防ぎながらFKから1点を奪われた米国だが、その戦闘意欲は後半も衰えない。サイドからの攻撃は、前半と同じように効果を見せ、50分にはビッグチャンスとなった。ドノバンの右サイドのドリブルで得た右CKをレイナがキック。1:ニアで合わせたボールはゴール前の空白地帯に飛び2:そこにいたバーハルターが右足ボレーでとらえた3:目いっぱいの高さでたたかれたボールはバウンドしつつ右ポスト近くへ4:カーンがこれに飛びついたが、体に当てて捕球できず5:そのボールが落下したのを再びカーンが取ろうとする6:そこヘバーハルターがスライディングしてきた。
 結局ボールはゴールラインは割っていなかったようだが、スロービデオでは、4の場面の後、ポストの陰にいたフリングスの手にボールが当たっていたのをとらえている。ダラス主審はこのプレーでなく、バーハルターのプレーをファウルと見たのだろう。
 米国の攻勢はこの後も続き、ドノバンの反転シュート(弱くカーンの正面)もあったが60分ごろからドイツが盛り返した。相手のパスを奪った選手が早いドリブルで進むカウンターはシンプルだがまことに迫力満点。
 そのドイツがヒヤリとしたのは、84分と89分のサネーの2本のヘディング。特に2本目の、右からのクロスに合わせたジャンプ・ヘッドはポストぎりぎりだったから…。バラックをマークしながら決勝点を許したサネーにとっての絶好のリペンジのチャンスだったのだが…。
 敗れたが、米国の進歩を示す良い試合だった。


(週刊サッカーマガジン2003年11月18日)

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