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事故の再発防止はできるか
大きな事故が起これば、その原因を調べ、責任を明らかにし、再発防止をはかるのは当然だろう。
85年のヘイゼル・スタジアムの事故は、スタンドの老朽もあったが、まず、リバプール・ファンがユベントス・ファンの席へ殴り込んでいったことから始まった。イングランドのサッカーファンのなかにいるフーリガンを、どのようにして識別し、試合場へ入れないようにするのか、そのためには、身分証明書の呈示なども検討されている。
もうひとつ、入場券なしのファンをどうするか。
試合が始まってから、遅れてやってきた観客を入れないわけにはいかない。入場券を見せて入ろうとする客のために扉をあけると、入場券を持たないものも、次々に入ろうとする。入口で混乱が起こる。群集心理で、それこそ入口のところで圧迫死が起こりかねない。
そこで、入口の一部を開けて中へ人を入れる。場内に空間があれば、それでよいかも知れない。
実際に4月はじめ、ノーリッジのキャロウ・ロードでの試合で、やはり、リバプールの入場券を持たないファン何百人かを入場させた例もあるとか。このときは、ほぼ満員であったが、場内でその問題は起きなかった。
警備関係者のなかには、中へ入れなくて表で揉み合うより、サッカー場へ入れた方がむしろ安全とみている者もあり、また、入れない欲求不満の若者を街路に放置するよりも競技場へ入れてやった方がいいという意見もある。
スタンドとグラウンドの間を区切っている鉄棚や金網をはずせという意見もある。現在ではリーグ加盟チームのほとんどが、頑丈な金網を設けている。すでに撤去をきめたところもあり、研究中のところもある、という。
結局は立派なスタジアムを、それも市中でなく、市の外に造るのが一番の解決策だという者もいる。
ヨーロッパ(大陸)では、たいていの都市が、近代的な巨大な総合競技場を造り、それをプロフェッショナル・サッカーが使用している。ところによっては、州政府、国が援助している。英国では、フットボール・プール(サッカーくじ)から行政は大きな利益をあげているのだから、それを総合グラウンド建設にまわせばいい、というのだ。
西ドイツやスペイン、イタリア、あるいはフランスなどにある、市が所有しているスタジアムに比べると、イングランドのサッカー場は古くて、規模も小さいといえる。
といって、いますぐ各クラブのホーム・グラウンドを、大改修することは望めないだろう。
(サッカーダイジェスト 1989年「蹴球その国・人・歩」)