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粘っこいキープとイルハンの突破で、トルコがセネガルに勝つ

韓国のベスト4進出

 長居競技場のプレスルームは騒然としていた。
 02年6月22日、ワールドカップは前日から準々決勝に入って、この日は2試合
が組まれていた。その一つ、午後3時30分キックオフのスペイン対韓国(光州)は、韓国が延長・PK戦で勝ったのだった。大阪ドームで行なわれた催しものに顔を出してから、長居へやってきた私は、ちょうど、プレスルームのテレビがリピートでPKの場面を流しているのを見た。スペインの4人目、ホアキンが失敗したあと、韓国の5人目の洪明甫が決めた。
 韓国が第1ラウンドの勢いを加速させ、イタリアを倒し、スペインをも撃破して、ベスト4へ到達したのは、まことに素晴らしいが、日本人記者たちにとっては、ノックアウトシステムの初戦で失速してしまった、わが代表に比べると、まことにうらやましい限り。話題が、この日のカードよりも、日・韓の比較論に集まるのもまた当然といえた。


イルハンの突進

 午後8時30分、セネガル対トルコの試合が始まる。セネガルは開幕戦でフランスに土をつけ、デンマーク(1−1)、ウルグアイ(3−3)と引き分け、16日の第1ラウンド初戦でスウェーデン(2−1)を破ってのベスト8。スウェーデンはCKをラーションがニアで合わせてリードしたが、セネガルはH・カマラの2ゴールで制した。1点目はドリブルシュート(右)、ゴールデン・ゴールとなった2点目はチャウが横にドリブルしてヒールパスしたのを左足で決めた。
 しっがりした組織的な守りと、一人ひとりのスピードとテクニックで、この試合でも優位に立つかと予感させたが、アフリカ勢2度目のベスト8進出に満足してしまったのか、目立ったのはむしケトルコの方。一人ひとりの粘っこいキープカを基調にパスをつなぐ攻撃展開が見事だった。その展開が生きるのは出来の悪いハカン・シュキュルに代わってイルハンが登場してから――延長に入って4分に右からのユミト・ダバラのクロスを右足で合わせて決勝ゴールを挙げた。
 交代といえばギュネス監督は延長に入ってMFのエムレ・ベレゾルに代えてアリフを投入したが、このアリフが右サイドを持ち上がり、ユミト・ダバラのクロスにつながったのだから、交代策の成功といえるが、バシュテュルクをはじめ、深い切り返しの巧みなトルコの選手のなかで、イルハンのような縦に強く早いFWが、その持色を発揮したともいえる。日本がこの準々決勝の場で、果たしてトルコのようにプレーできるだろうか――終わってしばらく考えこむことになる。


(週刊サッカーマガジン2003年12月2日号)

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