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村の人口の30倍、大群衆の拍手受け、シュバリエ勲章

双葉山の国でのサッカー

 ビッグアイと呼ばれる大分のスタジアムに集まった3万8627人が日本代表とカメルーンの試合に歓声を上げるのを見ながら、双葉山や稲尾投手を生んだ九州東部の、かつてはサッカーに無縁のようであったこの地に、長く知事を務めた平松寺彦の先見や、大分トリ二−タをはじめ多くの関係者の努力で、世界中の人たちと同じ楽しみが横付こうとしている――と心からうれしかった。
 試合開始の前にカメルーン共和国のンベラ・ンベラ・ルジューヌ駐日大使から、あの中津江村の坂本休村長に両国の友好に青献したとして「シュバリエ勲章」が贈られたが、地元の大分合同新聞は“村民の30倍の観客が見守る中”での授算式の模様や、中津江村からの「カメルーン・サポーター」の声援などを、翌日の朝刊の社会面の見開きで掲載していた。
 今度のキリンチャレンジカップ2003は、先のセネガル戦(新潟)と合わせ、北陸と東九州への浸透へのバックアップという点からもいい催しだった。
 対カメルーン戦の試合そのものも面白かった。ゴールを奪えなかったこと、海外での2試合で連続得点し、本人も強い意欲を持っていたハズの柳沢がチャンスをものにできなかったことについては、ここでは多くは触れない(いずれ私のインターネットのHP上で)けれど、サッカーは相手のあるスポーツだから、ボールを受けたときの相手の寄りの速さや、体が接触したときの相手の強さ(重さや大きさも含めて)などが、こちらのシュート体勢に影響してくる。
 ただし彼には日本へ帰ってきての“気負い”もあったかもしれないし、屋根付きスタジアムの例に漏れず、ピッチが必ずしもよい方ではなく、高速・柳沢にはマイナスとなったことなどが加わっていたかもしれない。
 多くの資質を持ちながら、周囲の期待通りには点を取ってくれない柳沢について、さまざまな意見があるようだが、私は彼がなにかのきっかけで、速さだけではなく“遅いプレー”“タイミングのずれ”“ボールをしっかり見て蹴る”といった、簡単で初歩的であって、しかも、日本サッカーの組織的教育の中で見過ごされやすい点に気が付けば、道は開けるだろうとみている。
 強敵相手にいいプレーをしたチームでなく、この稿は“ひとり”だけになった
が、“ひとり”の成長がチームの成長になるのだから――。2002年ワールドカップの話は次回は韓国対スペイン戦、私たちよりも“個”を重視した韓国の躍進を見ることにしたい。


(週刊サッカーマガジン2003年12月9日号)

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