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ラグビーのワールドカップに想う キッカーとストライカー

 オーストラリアで開催されたラグビーのワールドカップで、本家ののイングランドが初優勝した。新聞などの報道によると、長い間のアマチュア主義からプロ化に踏みきったことが、その背景にあるとともに、キック多用の戦術も効果的だったとのこと。優勝を決めたのも、ジョニー・ウィルキンソンの劇的なドロップゴールだった。
 今回のイングランドによって、ラグビーもやはり、フットボールである以上、“ゴールヘボールを蹴り込む”ことが(もともとの)目的であり、そのためにゴールを狙うキックの技術が大切であることを、日本の多くのラグビー愛好者にも知ってもらうという点では良かったと思う。
 古い時代のラグビーは(サッカーと同じように)ゴールヘボールを足で蹴り入れ(いや、蹴り上げるかナ)るのが唯一の得点で、タッチダウンは得点に数えないで、次のゴールヘのキック(ゴールキック)をトライ(試みる)する権利を持つだけだった。
 その考えは次第に変化したが、私が学生時代にクラス対抗などで、ラグビーを楽しんでいたころには、それでもトライが3点、PG(ペナルティー・ゴール)も3点。トライのあとで蹴って入れるゴールは2点追加だった。PGは、サッカーでいえばFKで、トライのあとのゴールキックと同様に停止球を蹴る(プレースキック)。これと別に試合の流れの中で、手にしていたボールをドロップキック(サッカーのハーフ・ボレーキック)でゴールに入れるドロップゴールは、4点だった。つまり、トライ(タッチダウン)よりも“値打ち”があるとみられていた。
 現在のルールでは、トライの得点が一番高いのだが、キックによるゴールの得点が残っているところが、ラグビーフットボールなのである。
 日本のラグビーは、かつてはキックを軽視していたことがある。ラグビーの名門、北野中学から来たバックロウ・センターが、僕がプレースキックをインステップで蹴るのを見て、そのキックは間違っていると言った。当時の彼らはトウ・キックで蹴るものだと思っていたらしい。また、試合中にに私がバンパン蹴って、タッチに逃げ、あるいは地域を稼ぐと、相手チームの、これも新京一中からやって来たラガーマンが、「蹴ってばかりで卑怯だぞ」と言ったものだった。
 近ごろは日本にも好キッカーが出始めている。ウィルキンソンが、そのいい刺激になってほしい。
 ゴールは唯一無二のサッカーの日本代表にも、もちろんスーパー・ストライカーが欲しいのだが…。


(週刊サッカーマガジン2003年12月23日号)

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