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楽しかった欧州組不在の日本代表

 中国ディフェンス・ラインの裏へ走り込み、ゴールに向かって疾走する久保竜彦に、ストライカーの“壮快”を見いだし、小笠原満男の、突っ立った姿勢での僅かな“間”の取り方と、一瞬にスペースを見つけ、ボールを送り込む視野とテクニックにヒザをたたき、遠藤保仁の役割を心得た“つなぎ”に感嘆した東アジア選手権2003決勝大会だった。
 そして最終戦では10人の日本代表のがんばり、それまで慎重過ぎて、歯がゆく見えた福西崇史の攻撃も見られたし、アレックスや山田暢久のサイドからの活発な攻めもあった。宮本恒靖の統率と、坪井慶介が自分のランクをひとつ上に上げての安定感が心地よかった。
 選手への指導はともかく、試合での采配について、メディアの多くから懸念を持たれていたはずの監督ジーコが、10人となったチームが前半を0−0でしのいだあと、本山雅志と藤田俊哉を登場させて、攻撃志向を明らかに(ハーフタイムに「1.5倍動け」と選手たちに要請したという)したのは、勝利しなければタイトルはないという立場から見て当然ではあっても、見事なものとの印象を与えた。
 日ごろのファウルの多さから、メディアには必ずしも評判の良くない大久保嘉人を使い続けたジーコが、その大久保の退場によって「選手交代に劇的な変化をさせた」と、采配ぶりを評価させたのだから、サッカーは面白いものだ。
 中田英寿という要をはじめ、欧州組6人不在のチームの一つひとつの試合には不満もあり、問題もある。
 中国戦で2−0となって、まず勝ち点3が濃くなったときに、もう1ゴール狙う、強い意欲が欲しかった。中国は日本と対等の形の試合をしようとしてきたのだから(個々の判断力やチームワークの差はあっても)、そういう相手から点を取ることで、コースの作り方も増えるはずだ。
 香港戦のPKによる1点だけだったのも残念だが、中国のように、いつもディフェンス・ラインの後方に大きな空白地域のある相手と違っていたところに、かえって難しさがあっただろう。
 この2試合は、チームの出来不出来は相手のレベル、相手のスタイルによって左右されるという常識通り。チャンスは多く作ったけれどゴールを奪えなかったのはなぜなのか。そのチャンスにかかわった一人ひとりが、もう一度その情景を思い浮かべ、ビデオを見て、なぜシュートが入らなかったのか、スペースや時間がどれだけあったのかを、シューターだけでなく、パスを出したものも工夫すべきだろう。
 大久保嘉人のシミュレーション問題については、別の機会にふれたい。


(週刊サッカーマガジン2003年12月30日)

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