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韓国・スペイン戦 粘る韓国のホアキンつぶし

連載30年と日韓の進歩

 1974年9月号(当時10月刊)からサッカーマガジンに連載するようになった「ワールドカップの旅」は、来年で30年となります。日本には遠い話であったワールドカップが、サッカー人の長い努力の積み重ねと、この国の国力によって30年の間に自らの土地で大会を開くようになり、代表チームは第1ラウンドのグループリーグを突破して16強に入るまでになりました。韓国との共催というFIFAの規約外のアイデアのおかげで長い間の隣国との心の壁を崩し始めることができたのも素晴らしいこと。その韓国代表はなんと、ベスト4に進んだのです。
 昨年6月の大会中にスタートしたこの「世界一蹴」は、過去7回の取材を振り返りつつ、2002年KOREA/JAPANの幸福な日々をかみしめる連載ですが、ときに番外の話題を書き込むこともあって、ペースはゆっくり。第51回で韓国・スペインの準々決勝の前半までやってきました。2回の番外編を挟んで54回目のきょうは、その後半の戦いです。(番外の話題については私のホームページhttp://www.fcjapan.co.jp/を参考に)


粘る韓国、強い監督の意志

 試合当日(2002年6月22日)の生放送を見損なった翌日、わが家でのビデオ観戦で、前半は韓国が劣勢だったことを知る。シュートは韓国が1本、スペインが6本。スペインのホアキンのドリブルが楽しく、ラウルがせっかくの舞台にいないのが残念。韓国は李雲在(イ・ウンジェ)の気合十分の守りが頼もしい。
 再開された後半で、いきなり李乙容(イ・ウリョン)がホアキンを倒す。ホアキンは右タッチライン際で、1)右足のソールで左から右ヘボールをなでるようにまたぎ(ボールはゆっくり、左へ転がる)2)次いで、左足を大きく前へ踏み出し李乙容に自分の体を(前向きに)近付け3)その体の後方でボールを(右から左へ)通そうとした。
 右足でボールをまたぐフェイントは、古くはスタンレー・マシューズ型(またいで外へ逃げる)が知られているが、このときのホアキンは、内へ抜くために“小さなまたぎ”のあと、体の後ろを通す(南米に多い)やり方。彼はこういう手の込んだものと、極シンプルなものを使い分けるが、李乙容はその体を手で押しとどめ、絡んだ。ホアキンヘの3度目のファウル。その笛に対して、すぐ近くのタッチライン外にいたヒデインクが、大きなジェスチャーで声を張り上げていた。
 判定に不満を表しつつ、李乙容を激励したのだろう。キープレーヤーをつぶし、自分たちのペースにしたいヒデインクの老練と気迫がうかがえた。


(週刊サッカーマガジン2004年1月6・13日号)

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