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ファウルを少なく、スタンドへの挑発を避けて

“またまた赤一色か”――ソウルはスタジアムだけでなく、街の中心部まで赤のユニホームで埋っていた。
 そんなテレビ画面を見ながら、極東でのワールドカップで、ドイツの準決勝、しかも、韓国を相手にという、願ってもないカードを、ナマでなく、映像で見ることになったわが身が、いささか淋しくもあった。
 2002年6月25日の夜、ワールドカップも、4強による終盤戦に入っていて、そのセミファイナル第1戦が始まっていた。


ドイツにはラメロウの復帰

 ドイツのラインアップはGKにおなじみのカーン、4人のDFが右からフリングス、ラメロウ、リンケ、メッツェルダー、MFはシュナイダー、ハマン、バラック、ボーデ、FWがノイビルとクローゼだった。ラメロウの復帰、中3日の休みをとれている彼らに、中2日の休養の韓国、しかも、第2ラウンドに入って対イタリア、対スペインと2試合続けて延長戦まで行なっている。そのハンディが影響するのだろうか――。
 GKは、見事な働きを続けてきた李雲在、洪明甫と崔眞普A金泰映の3DF、中盤は李栄杓、柳想鉄、朴智星、宋錘国、前は薛g鉉と安貞桓に代えて李天秀と黄善洪をスタートから起用し、右に車ドゥリを置いた。
 始まってしばらく、ドイツのコンディションが良いのが見てとれる。活動量を誇るドイツ代表を支えるメディカル・スタッフの優秀さについては、よく耳にするのだが、今度のこの一戦にかけての手順はどのようだったのだろうか――。
 面白いことに、そのドイツはいつもはバンバンという感じで体をぶつけるのに、激しさの中に冷静を保ちながらちょっと引き気味にプレーしていた。無用のファウルを避け、じっくり間合いを詰め、パスコースを遮断する守りに「監督フェラーはうまいな」と思う。
 開催国、韓国と戦い、その粘り強いプレーに敗れたポルトガル、イタリア、スペインといった欧州の強豪には、レフェリーの判断に対する不満が残った。
 ホームタウン・ディシジョンというものはないハズだが、もしあっても、それによっていらだつことのないようにしよう。そして、それより前に、ファウルをとられないようにフェアにゆこう、タックルは正確にボールにゆこう、かわされても慌てて足を出し、トリッピングでスタンドを湧き立たせることの影響を計算してのドイツのプレーだった。
 それは相手のシュートを防ぐカーンのセービングにも表れていた。


(週刊サッカーマガジン2004年3月2日号)

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