賀川サッカーライブラリー Home > Stories > >辛勝でも意味あり 体の強い相手から奪ったゴリ押しゴール

辛勝でも意味あり 体の強い相手から奪ったゴリ押しゴール

 ワールドカップ・アジア予選第1戦の勝利――みなさんおめでとう。苦戦をしながらも、最後にカづくでも決勝ゴールを奪ったのがすばらしい。


それは鈴木のヘッドから始まった

 決勝ゴールに至るボールのやりとりは
1)宮本が放った高いロングボールをペナルティー・エリア前、右寄りで鈴木がヘディング。
2)高く上がったポールに中田が飛び込んだが、届かず。相手DFがヘディングする。
3)そのボールの落下点へ鈴木が走って胸でトラップした。
4)それに走り寄った小笠原がバウンドしたボールを右足のダイレクトボレーでゴール正面へ。
5)ボールは中村に渡らず、エリア直前でワンバウンドし、それをDFアイルがヘディング。
6)強く頭で叩かれたボールが、エリア外でスタートを起こした中村を直撃。
7)真正面からの強いボールに、名手俊輔もものにできない。
8)彼の右足に当たってボールは再びアイルに跳ね返る。その足に当たってゴール正面のエリア内を斜めに――そこに久保がいた。
9)久保は左足でトラップし、自分の得意の型である左足の前にボールを押し出し、左足インサイドキックで叩いた。
13)ボールはGKアルハブシの前を通り、右下隅、ポストぎりぎりに入った。


相手のミスを誘発した強攻

 鈴木のヘディングから、9秒間でのボールの動きを、少し詳しく記すとこうなる。この雑誌でも当然、専門家たちのさまざまな解説が掲載されているハズだが、あえて――2002年のワールドカップの連載のこの欄で取り上げたのは、しばらく、この場面のビデオに関心が集まるだろうと思うからだ。
 偶然の積み重ねのように見えるこの久保のシュートまでにも、選手たち一人ひとりの懸命のプレーと、技術の正確さ(パーフェクトでなくても)、競り合いの強さ、運動量といったものが絡んでいるからである。
 完全にノーマークとなった久保が、当然のことながら、落ち着いて、右足のダイレクトでなく、自分の一番得意な左足のキックの位置ヘボールを置いたことはジーコの解説によって新聞などでも報道されているが、きれいにパスがつながらなくても(その問題は別の機会に)ゴールが生まれること、そのゴール前の一瞬のプレーがどれほ大切かを、オマーン戦の勝利は伝えている。そしてビデオで相手のGKアルハブシが、なぜ、手を出せなかったかを解析することも、サッカーヘの興味をいっそう増すことになると思う。
 それはこの号で取り上げることにしていた、韓国との準決勝のカーンの守りとも重なる問題であるからだ。


(週刊サッカーマガジン2004年3月9日号)

↑ このページの先頭に戻る