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セービングがパスに GKカーンの守備と攻撃
場面は6月25日、ソウルでの準決勝。韓国対ドイツ――大会中に少し体調を崩した私は、この試合は自宅でテレビ観戦にしたのだった。そしてキックオフしてしばらくのドイツの冷静な試合ぶりにDFB(ドイツサッカー協会)に蓄積されたワールドカップでの経験を見た。
シュートを叩いて味方DFへ
冷静、慎重な試合ぶりと言っても、攻撃的でもあった。2分にドイツはラメロウが最後列から右サイドに飛び出して、シュートをした。
韓国も反撃して8分に李天秀(イ・チョンス)がシュートを放った。右サイドを駆け上がった車ドゥリ(チャ・ドゥリ)からのグラウンダーを、右足でダイレクトに蹴った動きはスムーズで、見事だったが、GKカーンが右横へ挑んで防いだ。
カーンのセービングはまことに彼らしく、右へジャンプしながら、右手を広げて(拳ではなく)押し出すようにポールの方向を変えていた。彼の目は一瞬のうちにシュートのスピードとボールの回転、そしてコースを読んだのだろうが、同時に、ゴール前の敵味方の位置も確認したのだろう。右の掌(たなごころ)でたたかれたボールはDFフリングスの足元へ飛んだ。とにかくシュートをたたいて防いだというのではなく、味方に受けやすいパスをしたという感じだった。フリングスはこのボールを前線に送り、そこで相手のファウルがあってハーフラインでのFKとなったから、カーンからの“セービング・パス”は次につながったと言える。
ロングキックからシュートへ
韓国2本目のシュートは朴智星(パク・チソン)。再び車ドゥリが右サイドから、前回と同じようにやや斜め後方へのクロスを送る。これは読まれてインターセプトされたのを後方から駆け上がった朴智星が給って、DFを左へかわして左足でシュートした。DFの間を抜けたボールはゴール中央へのグラウンダーとなったが、そこにはカーンが待っていた。
カーンはキャッチして、今度はパントキックで一気に前線へ。それも上背のあるクローゼの方へ高く蹴り上げた。落下してバウンドしたボールをクローゼがヘディングすると、そのボールの落下するペナルティー・エリアぎりぎりの地点にノイビルがいて、ボレーでシュートした。
GK李雲在(イ・ウンジェ)の正面だったが、高さと速さとを心得たキックからの2タッチ目がシュートとなつた。
GKは攻撃の発起点――その例を日本全国のゴールキーパーとその卵たちが見ているだろうな、とうれしくなった。
(週刊サッカーマガジン2004年3月30日号)