賀川サッカーライブラリー Home > Stories > >堅実なドイツの落ち着き 韓国劣勢でスタンド沈黙

堅実なドイツの落ち着き 韓国劣勢でスタンド沈黙

層の厚さと総力戦の勝利

 日本ラウンド第1戦でUAEがレバノンに引き分けたとき、UAEのジョデール監督は、自分たちの方が日本よりも立場が悪くなったことを認めながら、「しかし日本のアテネへの道は自らの手で勝ち取らなければならない」と言った。
 その2時間後に、日本はバーレーンに負けてしまう。まことに欧州の監督たちが口にする「エニシング キャン ハプン イン フットボール」を地でいくサッカーの面白さと、スリルに富んだ5日間――。最後に日本が“自らの手”でアテネへの切符を手にした。
 一つひとつの試合やゴールシーン、あるいは重要な局面については、別の機会に譲るとして、今度のアテネ・オリンピック予選6試合での日本の勝利は、このU−23世代の層の厚さによるものといえる。
 それはコーチ制度の充実や少年や幼児への普及という関係者の長い地道な努力の成果だろう。何しろ、ケガや体調不良があったにせよ、阿部勇掛や大久保嘉人を日本ラウンドの控えに残しておくことができたのだから…。
 もちろん、総人口がJFAの登録サッカー人口よりも少ないバーレーン国の代表に勝てなかったことへの反省と工夫が必要なのはいうまでもない。
 しかし、とにかく、おめでとう。


反則、ドイツ6、韓国10

 さて、ワールドカップの旅は準決勝、隣の韓国と戦うのは、組織的なプレーヤー育成では、日本の師匠格のドイツ。
 しばらくの低迷期にあった代表チームは、この大会ではドイツらしい堅実な試合ぶりで勝ち上がってきた。その大黒柱、GKカーンの守り、特に守から攻へ、パントキックもセービングも、次につながるプレーが前号の話題だった。
 ドイツの攻撃は前半に5本のシュートの場面をつくった。FWのヌビーユが2本、クローゼが1本、DFのラメロウとフリングスが1本ずつ。
 ドリブル突破とロングボールが韓国のディフェンスの脅威となり、ファーポストヘ飛ぶクロスは、スタンドをひやりとさせる。
 前半でのドイツ側の反則は6と少ない。相手のキープに対して激しくというより、落ち着いた対応が目立った。
 それに対して韓国のファウルは10。疲れからか、動きが遅く、競り合ったときに反則が出てしまう。激しいボールの奪い合いから、相手側にファウルが出れば、スタンドから大歓声が上がり、心理的に圧迫してきたこれまでと違い、スタンドは沈んだままに過ぎた。0−0。試合は後半へ持ち越された。


(週刊サッカーマガジン2004年4月6日号)

↑ このページの先頭に戻る