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意外な序盤、トルコ優勢 やがてブラジルの攻撃ショーへ

 ハーフタイムに入って緊張が解け、埼玉スタジアムには“ホッ”とした空気が流れていた。
 2002年6月26日。ワールドカップ準決勝、ブラジル対トルコは前半が終わつて0−0。シュートはブラジルが9に対して、トルコは5。ほかに際どい壕面もあって、サポーターを含む6万1053人の観客には、まことにスリルに富む48分間(ロスタイム3分)だった。


トルコのキープカとパス攻撃

 手元のノートで前半を振り返る。出場国が32ヵ国になってチーム数もプレスの数も増えて、98年のフランス大会には準決勝では席の確保が難しくなったこともあったが、今回は開催国ということもあって、私のようなフリーランスにも、デスク付きの席が与えられている。おかげで、ノートを広げられるので、メモもしっかり取れるのがうれしい(欧州選手権などでは、こちらは第三者国の記者なので、デスクはない。したがって、小型のノートでないとメモを取りにくい)。
 そのメモによると、10分ぐらいまではトルコの中盤での運動量が勝って、攻撃回数も多く、ブラジルの0本に対して、2本のシュートを放っている。
 トルコのプレーヤーの多くは、キープのときの“切り返し”が深いこと。切り返す際にボールを“引く”ので相手側は取りにくい。ただし、この“引き”とともなう“切り返し”は、ボールを奪われはしないがすぐに前へは出られない。そこで、キープをする味方の横へ並びかけるチームメートのサポートが必要となる。そのサポート、つまり運動量と互いの呼吸が合っているときには、相手側はやはり人数を掛けなければ奪えない。


バステュルクとアキェル

 このゆっくりしたキープから突然、縦にドリブルを仕掛ける選手がいる。
 その代表格が小柄でタフで、C大阪のモリシこと森島寛晃に似たイルディライ・バステュルク。彼が展開の軸となるが、この日は背番号4を着けたアキェルの右サイドの攻め上がりが対面するロベルト・カルロスの裏を突く形で、効果的な攻めが2回も生まれた。
 1回目はロベカルの追走を握りきってクロス(ハカン・シユキュルはDFともつれて受けられず)。2回目はロベカルに倒されて得たFK(キックはGKマルコスがパンチング)となった。
 もっとも、チャンスを生み出しても、フィニッシュは成功しない。ブラジルの中央部分の守備がしっかりしていることもあり、ハカン・シュキュルヘ決定的なボールが渡らなかった。
 序盤でのやや意外なトルコ優勢から、スタンドはやがてブラジルの“攻撃ショー”にクギ付けになる。


(週刊サッカーマガジン2004年5月25日号)

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