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右サイドから放つカフーのノーマーク・シュート 攻撃ショーは伝統の形から始まった

 2002年6月26日、トルコは序盤の優勢から4つのチャンスを作った。4つめはバシュトゥルクがルッシオに倒されたFKから始まり、アキュルのクロスから生まれた。右サイドでボールを奪い、ロベカルと対面。内にドリブルして左足で中央へ送った。そのクロスをアルパイ・オザラン(FKのときにエリア内に詰めていた)がヘディングした。GKマルコスはセービングで右CKに逃れた。


ピンチの後のチャンス

 20分のこのヘディング・シュートにいささかヒヤリとした埼玉スタジアムのブラジル・サポーターは、ピンチのあとのチャンスに腰を浮かせることになる。
 左サイドでルッシオからボールを受けたエジウソンがハーフウェー・ライン10メートルを越えたところでキープし、内側に上がってきたホッキ・ジュニオールにバックパス。ジュニオールは、すぐに前方のリバウドヘ送った。その前にロナウド、その左にエジウソンが駆け上がり、さらに左にはロベカルもいた。
 相手二人が“囲み”に入ろうとするとき、リバウドは素早いキック・フェイントで牽制し、ロナウドがいる右へ。ペナルティー・エリア手前のロナウドのボールに相手DF二人が寄る。右へ流れながら、ロナウドは右にポッカリ開いた広いスペースに流し込む。そこヘカフーが走り込み、ワントラップしてシュートした。


ブラジル人のシュート力

 しっかりGKの位置を確かめ、ファーポスト側を狙って強く蹴ったカフーのシュートは、GKリュストゥの右手に防がれて惜しかったが、左から中央ヘボールを動かし、リバウド、ロナウドがそれぞれフェイクを織り込み、右サイドに空白地帯を作った見事な攻撃だった。70年大会の優勝以来の伝統的なこの攻めは、彼らのゴール奪取意欲に火を点けた。
 この後の左CK(ショート・コーナー)はいったんクリアされたが、それを拾ったディフェンス・ラインからの長いパスで、ロベカルがドリブル・シュート。右足のシュートは左足ほどの威力はなくても、二アポストぎりぎりに飛んでスタンドを沸かせた。
 23分にはリバウドがエリア左隅の外からシュート。スライス気味に弾道が曲がり、直前でバウンドしたボールをリュストゥは捕球できず胸に当てる。それをロナウドが飛び込んで右足に当てる。ボールがリュストゥの正面に来たのは、トルコにとって幸いだったが…。
 シュートが出始めると、ブラジルは中盤の動きが早くなり、相手へのプレッシャーもパスのタイミングも良くなる。カナリア軍団の攻撃ショーは、いよいよ華やかになり、彼らのシュートの一つひとつに埼玉スタジアムは沸いた。


(週刊サッカーマガジン2004年6月1日号)

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