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勝負を決めたロナウドのトーキック・シュート
後半早々の先制ゴール
後半のブラジルの攻撃は、キックオフから後方へ戻し、そこからのロングボールをペナルティー・エリア手前の左寄りで長身のジウベルト・シウバがヘディングでゴール前に落とすという攻めの形から始まった。エリア右寄り手前にはルッシオも上がっていたから、どちらのサイドも選べたのだろう。このロングボールに続く、右サイドでのクレベルソンの左DFエルギュンヘの執拗な追い込みに、いよいよブラジルは“総がかり”になった――と誰もが思ったに違いない。
強い相手の強いプレスに悩まされながら、トルコもスキを見つけて攻めに出る。そのトルコの攻め込みを防いだブラジルのカウンターから49分のロナウドのゴールが生まれた。
その1分前にトルコはセンターバック、アルパイの攻め上がりから、ハカン・シュキュルがゴール正面20メートルでボールを受けたが、左へ送ったパスがルッシオに奪われた。ルッシオのカウンターをバステュルクがホールディングの反則でひとまず防ぎ、そのFKの後、再びボールをキープして、左サイドからハサンがクロスを送った。ハカン・シユキュルの
頭に合ろはTというところだが、ボールはマーカーのルッシオとハカン・シュキュルを越えた。そこをカバーしたのはロベルト・カルロス。胸に当てて、GKマルコスにパスをした。落下してくるボールの高さと勢い、そして、背後から走り込むユミト・ダバラの気配を感じて、滑り込むように姿勢を低くして胸に当てたロベカルのプレーに思わず声が出た。
ドリブル・パス・ドリブル・シュート
このボールを受けたマルコスが左サイドヘ開いたジウベルト・シウバに送る。彼はドリブルして一気にハーフラインを越え、タッチ際からロナウドヘパス。エリア左隅の後方10メートルでボールを受けたストライカーは、わざわざ外へ動いて背後のアキュエルをかわし、次いで内ヘドリブルで切れ込んでシュートした。シュート地点はエリア左隅から中に入ったところ。キックの形から見て、トー(足の先)だったろう。グラウンダーのボールはGKリュシュトゥの伸ばした手に当たって右ポストぎりぎりに飛び込んだ。
後半が始まって4分、相手の攻撃を防いで、左へ展開してからジウベルト・シウバのドリブルとパス、ロナウドのドリブルとトーキック・シュートであっという間の先制ゴールだった。
プレスを掛けに出たブラジルが、中盤のボール奪取からではなく、ゴール前での“深い”位置からのカウンターに成功した面白みもさることながら、ロナウドが、囲むトルコのDFの位置とシュート・コースからトーキックでシュートしたところにこのゴールのポイントがあった。これでロナウジー二ョのいないブラジルの勝ちは、ほぽ決まることになる。
(週刊サッカーマガジン2004年6月15日号)