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3位決定戦 トルコ×韓国 開始11秒のファステスト・ゴール

 EURO04はビッグ5(イタリア、イングランド、スペイン、ドイツ、フランス)抜きの準決勝となり、それでいて内容もハイレベルでますます面白くなりました。もっともこういうのを見ると、Jリーグとは違うね、としたり顔で“岡目八目”が増えるのも困りものです。
 私はそのつど、あの大会へ日本代表が参加すればきっと面白い試合になるから――と言うのですが。今回はそのヨーロッパでなく、2002年ワールドカップ。前々号のあとを受けて、東上する車中でトルコ対韓国の3位決定戦を振り返るところです。


裏切り続けた背番号9の先制

 6月29日夜、韓国の大邱から送られてくる映像ではいきなり、午後8時の開始直後にトルコのゴールが伝えられた。11秒。まさにファステスト・ゴール。決めたのは、準決勝まで得点なしのハカン・シュキュル。191センチの背番号9、期待を裏切り続けてきたエースだった。
 ファステスト・ゴールの前例を生で見たのは1982年。スペイン・ワールドカップのイングランド対フランス戦。1次リーグ4組の第1戦(会場はビルバオ)だった。
 キックオフ直前にイングランドの右サイドのコッペルが飛び出す気配を見せていたのにフランスが気付かず、ボールがコッペルに渡って右タッチラインに出たあと、すかさずスローインからクロスが入って、ロブソンが決める。27秒だった。フランスの守備はいきなり突っかけてきたイングランドの速さに混乱した。


イルハンとシュキュルのやる気

 3位決定戦は、準決勝で負けたチーム同士が対戦するため、いささか気の抜けた内容になりがち、という声が多いが今回は遣う。両チームとも3位という栄誉に執着するだろうから私は初めから気合が入るのでないか――とみていた。
 トルコの気迫、特にこれまで不振だったハカン・シュキュルとケガのハサンに代わってスタートからコンビを組んだイルハン・マンスズの“やる気”を韓国は察知できなかったのか――。
 韓国はキックオフのボールを最終ラインの柳想鐵に回したところヘハカン・シュキュルが詰める。柳想鐵が中央の洪明甫にパスするとイルハンが接近し、ボールを止め損なった洪明甫に絡む。そこヘハカン・シュキュルが加わりボールを奪うと、縦に突破し左足のインサイドで蹴った。奪った位置はペナルティー・アークのやや手前。シュートしたのが、エリアに入るか入らないかのところだった。
 テレビのスローで見ると、ボールがセンターマーク上にある間にハカン・シュキュルもイルハンも前方へ走りだしている。彼らの意気込みの強さが心の準備のできていない韓国のミスを誘発し、ファステスト・ゴールが生まれた。サッカーは面白くて怖い、と思った。

(週刊サッカーマガジン2004年7月20号)

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