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韓国がFKで追い付き、トルコが突き放す。一進一退の攻防――。

レーハーゲルとピオンテク

 EURO04でギリシャが初優勝――。選手一人ひとりの驚くべきスピードと運動量。見事な組織力と、ここぞという場面でゴールをもぎ取る集中力に脱帽した。これまで大きな大会での実績がないギリシャを欧州ナンバーワンに引き上げたオットー・レーハーゲル監督の顔を見ながら、20年前のEURO84を思い出した。
 8チームが集結した第2回大会で、開催国フランスがプラティニ、ジレス、ティガナたちの活躍で優勝したが、一方でデンマークの躍進も注目された。当時、まだプロのリーグはなく、オリンピックで上位に入ったことはあっても、ワールドカップやEUROでは目立たなかったデンマークが、予選でイングランドを制して本大会に進み、ベスト4まで上がったのだった。準決勝でスペインにPK戦(1−4)で敗れたが、堅い守りと、若手のラウドルップと“猛牛”エルケーアとの攻撃力は、大会の一つの魅力だった。
 海外でプレーする選手を集め、モチベーションを高め、その力を引き出し、巧みに組み合わせたのがヨゼフ・ピオンテク監督。当時は44歳だったから、レーハーゲル監督(63歳)とほぼ同世代のドイツ人コーチだ。この好成績に勢い付いたデンマークは、代表の強化と国内リーグの整備(プロ化)、若手育成などに積極的になり、EURO92で優勝し、ヨーロッパでの地位を確立している。
 すでにプロリーグもあるギリシャが、今後どのようにサッカーを発展させていくのだろうか――。そう言えば第1回のオリンピックがアテネで開催されたとき、デンマークからはるばるチームが訪れて非公式試合をしたという話が残っているのも不思議な縁というべきか――。


李乙容の見事な左足FK

 このあたりで、2002年ワールドカップの3位決定戦の回想に戻ろう。
 11秒(10秒8と書いたこともあった)のファステスト・ゴールのショックを振り払うように、韓国が攻勢に出る。相手陣内でのチェックが実って、宋鐘国がドリブルして、バステュルクの背後からのタックルで倒れてFKを得た。ペナルティー・エリア外5メートル。中央右寄りの位置から李乙容が左足で決めた。
 スローで見ると、蹴り足のスイングも、蹴った箇所も、足首の利かせ方も素晴らしく、壁の中央部でジャンプするエルギュンとビュレントの頭上を越え、ゴール右隅へ。カーブを描きつつ、落下してゴールに飛び込んだ。ゴール中央、左寄り(キッカーから見て)にポジションを取っていたGKリュシュトゥがジャンプして手を伸ばしたが絶望的だった。
 9分の同点ゴール。赤一色に染まったスタンドも、テレビ前の私も韓国の盛り返しを期待したが…。その10分後、イルハンとハカン・シュキュルのコンビが2点目を奪い、トルコが再びリードした。

(週刊サッカーマガジン2004年7月27日)

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