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後方からの躊躇ない飛び出しにチームワークの良さが見られた

 キリンカップサッカー2004(以下、キリンカップ)で日本代表がスロバキア代表に3−1、セルビア・モンテネグロ代表に1−0で勝ち優勝した。旧ユーゴスラビアの時代からサッカーのタレントの宝庫である伝統は、セルビア・モンテネグロと国名が変わり、国の規模や人口が小さくなっても残っていて、なかなかの強豪だった。4月の東欧遠征でチェコに勝ち、6月のイングランド遠征ではイングランドと引き分けた。それに続くキリンカップでの優勝は、選手たちには大きな自信になるだろう。


選手間の相互理解

 「選手の自主性」という考え方を前面に押し出してきたジーコのやり方は、ある時期には強い批判に晒されたが、ここ最近の試合を見る限り、選手の相互理解が深まり、チームワークが良くなっている。
 第2、3列から飛び出すときに、パスが正確に出なかったり、受けたボールを奪われたときに自分が飛び出してできたスペースを突かれてピンチを招くのでは、選手は飛び出すのに躊躇してしまい、意欲も薄れるものだ。それが、選手間の理解が深まる(当然、話し合いもいる)ことで、積極的に前へ出られるようになる。
 この飛び出し(『追い越し』と呼ぶ専門家もいる)がときにはチャンスメークになり、ときにはシュート・チャンスになることは2002年ワールドカップの旅の連載の中でも何度かそうした場面を紹介してきた。


福西崇史の積極性

 キリンカップの第1戦ではボランチの福西の飛び出しによって決定的なチャンスを作り、第2戦では遠藤の飛び出しで48分にこの日唯一のゴールが生まれた。
 愛媛の新居浜工高から磐田に入団し、Jデビューから10年のキャリアを持つ福西は個人的にことしあたりからステップアップしてほしい選手だった。ポールを扱う姿勢やヘディングでジャンプするときの美しさは天性の資質を示している。豊かな能力を持っているのに、いささか慎重に見えるのが歯がゆかった。キリンカップで彼が積極的に前に出る(当然、動きの量も増える)ようになったのは、素晴らしいことだ。
 この大会では中田英、稲本、小野らが不在でもチームカをアップさせた。中村の構成力に磨きが掛かり、鈴木は自分の持ち味を伸ばし、若い玉田は経験を増やし新たな力を代表に加えた。サブの選手にチャンスが回らなかったのはちょっと残念。しかし、波に乗った日太代表のプレーを見るのは楽しかった。
 もっとも、選手たちはこうして築いたチームプレーをさらに高めるために、もう一つ個々のプレーの精度を上げ、体も鍛えなくてはならないことは言うまでもない。

(週刊サッカーマガジン2004年8月3日号)

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