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重慶での戦いの中で本山の進歩を期待する
オマーン戦のドリブル・シュート
『ああ、もったいない!!』
思わず声が出た。本山のドリブル・シュートが左へ外れたときだ。
アジアカップのグループリーグD組第1戦、日本対オマーン(7月20日・重慶)は前半に中村の見事な左足シュートで先制した日本だが、守勢に立たされ、75分からしばらくピンチが続いたあと、84分にビッグチャンスが来た。アレックスが左タッチライン沿いに、前方ヘパスを送る。ハーフウェー・ラインを9メートルぱかり越えたところで本山がノーマークで受け、内ヘドリブル。接近する相手DFを遠くから仕掛けて内にかわし、ついで伴走する相手に対し、左前へ出るフェイクをかけて、内に抜いた。ペナルティー・サークルやや左寄りで、彼のカなら十分に決められる距離だったのに…。
ドリブルのうまさで知られている本山は昨シーズンから体が強くなって、ドリブルそのものも相手に脅成となっている。J1でもディフェンスを切り裂いた後のパスのうまさには何度も感嘆しているが、こういう場面で決めてこそ本山なのだが。
惜しい場面は7月28日のイラン戦でもあった。75分に中村からのパスを本山が良いスタートを切ってペナルティー・エリアぎりぎりのゴールライン近くで拾い、追走してきたDFをキック・フェイントの切り返しでかわし、エリアに入って右後方の遠藤にパス。遠藤がエリア内3メートルでシュートした。ボールは防ごうとスライディングしてきたDFの右を通りゴールに向かったが、GKミルザブールがファインセーブで防いだ。本山のパスも遠藤のシュートもそれぞれ及第点。ミルザブールの反応を褒めるべきだろうが、もう一つのコースが本山の頭をかすめたかどうか――。
イラン戦の決定的なチャンス
それはDFをかわしてエリア内でボールを持ったとき、近いサイドの後方からの遠藤と同時に、ファーサイドの広いスペースを感じたかどうか。ゴール正面の鈴木と彼の周辺にDF二人がいて、ファーサイドはフリーゾーン。そこを福西が狙って入ろうとしていた。もし、DFと鈴木の上を越してボールを送れば、ミルザプブールはニアポストの位置からポジションを移さなければならず、福西のヘデイング・シュートを防ぐのは難しかっただろう。
もちろん、本山にはシュート、さらに遠藤へのパスの前にシュート・フェイントの手もあった。
相手の動きが鈍った後半の中盤以降に、日本はランと組織プレーでビッグチャンスを生む力を持っている。それを決定的にするゴール前でのプレーを磨き上げる時期に差し掛かっている。
(週刊サッカーマガジン2004年8月17日)