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ワールドカップ初対決のブラジル対ドイツ。日本と密接な両国に、特別な思いが…

 2002年ワールドカップ(W杯)から2年と1ヵ月が過ぎた。W杯の中間年に開催されるEUROはすでに終了し、アジアカップも締め切り時点で決勝を残すだけになった。2年掛かりの“旅”もいよいよ6月30日の決勝当日、横浜国際総合競技場での話になる。
 試合前のプレスルームは、どこか緊迫感を残しながらも、雑然とした感じだった。その中でふと1974年W杯西ドイツ大会、ミュンヘンのオリンピック・スタジアムでの決勝前の雰囲気を思い出した。いつもは親しく口をきくオランダ通信のコールマンは、やたらに周囲を歩き回っては落ち着かないようだった。いや、あの決勝当日はプレスルームだけではなく、ミュンヘンの町全体が朝からピーンと張り詰めていた感があった。西ドイツの相手であるオランダとクライフの評判があまりにも高かったからだ。

 78年のアルゼンチン大会は強敵オランダとの決戦を前にブエノスアイレス全体が落ち着かず、私自身も浮わついていたことを思い出す。それから20年後の98年フランス大会は、日本が初めて参加し、それを取材するという初体験ができた。
 開催国とブラジルの決勝は、フランス記者の緊張よりもレキップ事件(エメ・ジャケ監督を批判し続けた編集者と同監督のやり取り)や、試合直前のメンバー訂正事件(ブラジルがロナウドを外してスタメンを発表しながら、後に入れて訂正発表した)の方が頭に残っている。

 これまで生で観戦したW杯決勝7回のうち、ドイツ(西ドイツも含む)が勝ち上がったのは74、82、86、90年の4回、ブラジルは94、98年の2固。残念ながらブラジルの58、62、70年の優勝と西ドイツの54年優勝、66年準備勝は見ていないが、74、90年の優勝とブラジルの94年、PK戦での優勝を見ていた。
 優勝回数はブラジルが4回、ドイツが3回。ブラジルはタレントの輸出国としてヨーロッパだけでなく、世界へ優れたプレーヤーを送り込み、ドイツはDFB(ドイツサッカー協会)の優れたコーチ術と組織的教育で世界に大きな影響を及ぼしてきた。

 ネルソン吉村大志郎やセルジオ越後という日系人からラモス瑠偉やジーコまで、ブラジルのプレーヤーなしで日本サッカーの発展はなく、デットマール・クラマーをはじめDFBのバックアップなしで日本サッカーの向上はなかった。
 21世紀で初のW杯はアジアで初めて共催で行なわれ、その決勝が日本に最も大きな影響を及ぽした両国の初対決――。大会を締めくくるのにふさわしい試合になってほしい。そうあらためて思うのだった。


(週刊サッカーマガジン2004年8月24日号)

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