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アルゼンチン代表のボール奪取から ロナウドの先制ゴールを思い浮かべる

ディエゴ・ミリトのボール奪取

 前半1分40秒、ボールを取った宮本恒靖にその背後から背番号9のディエゴ・ミリトが鋭く詰めて奪ったプレーは、その後リケルメ、ルシアノ・ガルシアと渡って、日本のピンチとなった。ガルシアのクロスは楢崎正剛がジャンプ・キャッチしてこの局面を防いだが、D・ミリトのボールを奪うときの速さと強さに強い印象を受けた。
 8月18日、静岡スタジアム・エコパで行なわれたキリンチャレンジカップ2004は、アジアカップの激闘から日が浅い日本代表にも、ヨーロッパからの長旅と時差のハンディを負ったアルゼンチン代表にも28・1度の高温と90パーセントという超多湿はまことに辛い条件となった。だが、それだけに開始早々から“突っかけて”“奪う”アルゼンチン、特にFWの姿勢が私には興味があった。
 もちろん、アテネでの日本オリンピック代表の二つの敗戦――。特にパラグアイ戦で相手FWに日本DFがエリア内でボールを奪われ、それが手痛い失点となる伏線になっていた。
「高い位置でプレスを掛けてボールを奪い、そこから早い攻撃をする」と呪文のように唱える日本サッカーだが、それをバラグアイに実行されるとは――。


ロナウドの先制ゴール

 それは2002年ワールドカップの旅で、ちょうどいま取り上げている決勝を制したブラジルのゴールにもつながるテーマであった。ご存じの通り、ブラジルの2−0の勝利の重要な先制点は、ロナウドがドイツDFのボールをペナルティー・エリア近くで奪った(それも一度攻めに行って取られた後で)ことから生まれた。このことは連載の初期(880号掲載)にも記している。
 ロナウドは得点カはもちろんだが、ボールを奪う独特の閃きとうまさを持っている。どうやら、そのロナウド式を世界中で実行し始めているように思える。
 アルゼンチン代表が前半4分に挙げた先制ゴールも、リケルメのパスに始まり、日本のゴール近くでプラセンチのボールがいったん日本に移ったところをマリオ・サンタナが取り返して、ガレッティのシュートにつなげた。この場面の詳述は別の機会に譲りたいが、この夏はさまざまな勝利、敗戦の中で相手ゴール近くでボールを奪うことの重要性、それを受けたときのダメージを、2002年ワールドカップ決勝と思い合わせ、確認することになった。

(週刊サッカーマガジン2004年9月7日号)

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