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外国組と国内組のミックス

 ワールドカップ94――米国での大会の出場をかけた予選試合のなかで、サッカーの母国イングランドと“世界最強”のオランダがいる欧州第2組は、伏兵ノルウェーの頑張りで予断のつかぬ形勢となっている。氷河とフィヨルドの国、バイキングの国――ノルウェーのサッカーは?


 W杯94のヨーロッパ予選は、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)加盟の39の国と地域の協会のうち、リヒテンシュタインを除く38チームがエントリー。6組に分かれて、各組の上位2チームが米国大金に出場することになっている。そのうち第2組はイングランド、オランダ、ポーランド、トルコ、ノルウェー、サン・マリノの6ヶ国が入っている。

 イタリア東部のアドリア海に面した人口2万2千人の小さな共和国サン・マリノの代表チームはまず圏外として、W杯優勝1回、4位1回のイングランド、準優勝2回のオランダ、3位が2回のポーランドなとがまず有カチーム。ノルウェーとトルコは一段下に見られるのが普通だが、昨年9月9日から始まったこのグループの3月いっぱいまでの試合で、ノルウェーは4戦して3勝1分け。イングランド(3勝1分け)とともにトップに立っている。
 3勝のうち対サン・マリノ(10−0、2−O)からの2勝は当然としても、ホームでオランダを破り(2−1)アウェーでイングランドと引き分け(1−1)たのだから立派なもの。
 4月28日にホームで迎えるトルコとの1回戦に勝てば、弾みがつくだろう。そのあと6月2日にイングランドとの2回戦(ホーム)1週間後にオランダとの2回戦(アウェー)が予定されていて、6月のこの週が最大のヤマ。これを乗り越える(たとえ2引き分けでも)ことができれば、米国行きが近づいてくる。

 ノルウェーは第2次大戦前の1930年代後半に国際舞台で活躍したことがあるが、第2次大戦後はあまリ振るわなかった。
 W杯やヨーロッパ選手権などの予選で、ときにはイングランドやフランスなどを破って、“油断できない国”と強国から警戒されたことはあったが、予選リーグを突破するなどと考えられたことはなかった。
 それが、いくら調子が出ないといっても、ファン・バステン、ベルカンプ、ライカールト、クーマンなどの揃ったオランダを倒し、デス・ウォーカー、ピアス、プラット、ガスコインらを擁するイングランドと引き分けたのだから……。
 ウェンブリーのこの試合では、ガスコインが1年半ぶりに復帰したことで大いに期待されたのだが、ノルウェーはスパーズで活躍しているGKトルストベットやリベロのブラーツェット(ブレーメン/ドイツ)らがよく守り、後半にプラットのゴールでリードされると、レクダルのロングシュートで同点とした。
 エギル・オルセン監督は、初戦のサン・マリノから第4戦のイングランドまで、ほとんと同じメンバーで戦っている。

GKトルストベット(スバーズ/イングランド)
DFブラーツェット(ブレーメン/ドイツ)R・ニールセン(バイキング)T・ペテルセン(ヨテポリ/スウェーデン)ビョルンビー(ローゼンボルグ)
MFハレ(オールダム/イングランド)ミクランド(TKスタルト)インゲブリグステン(ローゼンボルグ)レクダル(K・リエージュ/ベルギー)
FWヤコブセン(ヤングボーイズ/スイス)セルロート(ローゼンボルグ)


 この他にべリー(ヴェッティンゲン/スイス)フロー(ソグネダール)レオンハルデン(ローゼンボルグ)らが交代で山場することもある。
 したがって11人のラインナップのうち、6人は外国チームで働くプレーヤー。なかで有名なのはルネ・ブラーツェット。ベルダー・プレーメンが咋シーズン、カップ・ウィナーズ・カップを制したときの守りの中心。ヘディングが強く、ポジションどりのうまさでヨーロッパ屈指のリベロと評価されている。31歳、ブンデスリーガでの6年の経験は、ノルウェー大乗チームの主将としてチームを率いてゆく自信の裏付けとなっている。
 1968年11月6日生まれのレクダルは24歳。昨シーズンのベルギー・リーグで21ゴールをあげ、得点ランキング2位になって注目された。ミッドフィールドからの中・長距離シュー卜は威力があり、この予選シリーズで第1戦のサン・マリノで2点、オランダ戦で1点(PK)イングランド戦でも1点と合計4ゴールをあげている。
 こうした外国組が、国内組のベテラン、セルロートやビヨルンビー(23歳)ミクランド(22歳)などの若いスターたちとうまく組み合わされたのが、これまでの好結果を生んだ要因と見られている。

 ノルディック・スキー発祥の地というイメージが強く、冬の雪と氷のスポーツは強くてもサッカーではとても欧州の強国に太刀打ちできない――とされていたノルウェーのこの好成績は、まったくの偶然なのかどうか……。


(サッカーダイジェスト 1993年「蹴球その国・人・歩」)

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