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ワールドカップ初出場

 パルテノンの神殿、アポロンの聖域、そしてあのオリンピア……。私たちの心をひきつける古代遺跡の国ギリシャが、来年のワールドカップに代表チームを送る。東洋の「日出る国−日本」のイレブンと「西洋文化の始祖の国−ギリシャ」の代表チームが、新大陸で顔を合わせる可能性もある。その日を夢見て、ギリシャのサッカーを眺めることにした。


 5月23日、モスクワで行なわれた94年USAワールドカップ予選、欧州第5組のロシア対ギリシャの試合は、ギリシャが前半のタイムアップ直前にFKから先制ゴールを奪い、ロシアの猛攻を70分の1点に押さえて1−1で引き分けた。
 この結果、ギリシャは第5組の5ヶ国リーグ6試合を終了して4勝2分け、勝点10となり、残り2試合を落としても第5組の上位2チームに入るため、ワールドカップの初出場を確定した。
 このグループは、ギリシャの他にロシア、ハンガリー、アイスランド、ルクセンブルグが入っていた。本来ならこのグループのトップ候補と見られていたユーゴが、内戦のために国連の制裁措置を受けていて、サッカーの国際舞台への参加もできなくなっていた。

 ギリシャの予選は、92年5月13日の対アイスランド戦で始まった。このホームでの第1戦を1−0でモノにすると、10月7日に再びアイスランドと、今度はアウェーで戦った。ヨーロッパの東南の端のギリシャと、北大西洋のアイスランドは、気候も風土も全く異なる土地。ここしばらくのアイスランド代表はホームで強く、伝統のハンガリーが1−2で敗れたばかりだったが、ギリシャ代表はこの困難なアウェーを1−0で乗り切った。
 次の相手はハンガリー、11月のホームは0−0の引き分け。次いで小国のルクセンブルグを迎え撃って2−0で勝ち、3月にはブダペストでのアウェーでハンガリーを1−0で倒したのだった。4勝1分けの無敗を保持して、次の相手はロシア。ソ連は解体してもロシア共和国は人口1480万人、サッカー登録クラブ4万3700、プレーヤー217万人の“大国”だ。
 そのより抜きの代表チームは、ユーゴが参加できないこのグループでは、まず最強のチーム。アウェーで引き分けることがいかに大変かは、アジア予選でのUAEシリーズで日本の私たちも経験済みだが、勢いに乗るギリシャのイレブンは、その困難な仕事を見事にやってのけたのだった。


(サッカーダイジェスト 1992年vol.68「蹴球その国・人・歩」)

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