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戦略家カルロス・ビラルドが言う。『優れた選手の判断が攻めに必要』

プロ野球とワールドカップ

 プロ野球が選手会のストによって、日本国中の大きな話題となった。テレビも新聞も、現行のプロ野球にさまざまな問題があることを指摘し、識者らしき人の意見も多く語られた。
 若いころからスポーツを書き、スポーツ紙の編集局長としてプロ野球を大きく扱う仕事としてきた経験を持った。また、職業とは別にライフワークとして、サッカーに打ち込み、アマチュア時代からオリンピックでのステップアップや少年への普及、地域クラブの運営、全国リーグの開始、そして1993年のJリーグ創設とその10年後の2002年FIFAワールドカップKOREA/JAPANの開催――の一つひとつに直接にせよ間接にせよ関わってきた私には、ストに発したプロ野球の変革が“明治維新”程度で終わるのか、太平洋戦争敗北の後の“マッカーサー改革”となるのか、それともいまの“小泉改革”になるのか。とても面白いところだ。
 2002年ワールドカップも、ある意味では、いまのプロ野球の問題にどこかで影響を与えたものの一つだろう。
 その日韓共催大会を紀行の形で綴る私の8回目のワールドカップの旅も、いよいよ、終わりに近付いている。


未来のサッカーのビデオ

 カルロス・ビラルドも元気そうだったな――。7月1日、7時50分、横浜発。西へ向かう列車の中で思う。
 前夜、スタジアムで決勝に続く閉会セレモ二ーを見た。美しく簡素で描き出された富士山はとても洒落ていた。ソウルでの開会セレモニーが韓国の歴史絵巻でとても華やかで賑やかだったのに比べるとあっさりしていた。
 市内のホテルに戻ると、ロビーでビラルドさんに会ったのだった。
 1986年、マラドーナとアルゼンチン代表を率いてワールドカップに優勝し、4年後にも準優勝、戦略家として知られた監督だった。私が企画した1988年2月の『ユニセフ40周年記念、南米選抜対日本選抜』(於・国立競技場)のときに南米選抜の監督を引き受けてもらって以来、付き合いがあり、彼が制作した「未来のサッカー」というビデオについて相談を受けたこともあった。
 出発を控えたビラルドさんとは短い挨拶をかわしただけだった。『守備、戦術が進む現代のサッカーでは、その守りを打ち破るのはマラドーナのような優れたプレーヤーの判断が必要となる』と言っていた彼は、今度のブラジルの優勝をどう見たのか…。
 2002年ワールドカップは終了。7月3日に入院して手術をすることになっているというのに、私の頭の中の大会の反芻(はんすう)は終わることなく、病院での時間つぶしに歴代大会の決勝を重ね合わせるのも悪くない、などと思うのである。

(週刊サッカーマガジン2004年10月12日)

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