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オマーン戦の勝利は正確な技術と それを生かす自主判断による

 オマーン戦2勝。2006年ワールドカップ・アジア1次予選突破――まずはおめでとう。現地からのテレビ放映は、緊迫感を盛り上げたいアナウンサーの高いトーンと解説者の風間八宏の落ち着いた口調が好対照でまことに面白かったが、その中で語られたようにチームの一人ひとりが90分間にそれぞれの局面で役割を判断し、実行している様子が見えていた。
 GK川口能活が飛び出してボールを処理できず、拾われてシュートされたピンチに田中誠がゴールカバーに入っていて胸でボールを止めたときには思わず拍手したものだ。ミスのあとのチームメートのカバー、そして田中が弾いたボールにすぐに飛びついた川口のリカバリーの早さがいまの日本代表の力を表わしていた。


小野―中村―鈴木のゴール

 52分の唯一のゴールは――ビデオで見返してもあきることはないほど――ボールと人の動きとボールに絡む選手の技術の高さ、強さが十分に表れていた。
 左タッチ際のFKから、小野伸二が中村俊輔の動きに合わせて縦にボールを送り、中村がペナルティー・エリア内左サイドを縦に走りつつクロスをファーポス卜寄り、ゴールエリアラインヘ送り鈴木隆行が走り込んでヘディングしたものだった。起点のFKは、鈴木に対する相手DFの後方からのファウルによるもの。
 リプレーのクローズアップを見ると、
1)中村がマークを背にしつつちょっと後方に戻ると見せかけて縦にダッシユするところ
2)そして、その動きに小野のパスがコースも強さもピタリと届く(小野にとっては当たり前のプレーだが…)
3)中村は追走する相手をフェイクで立ち止まらせておいて、もう一度ボールを前に出してクロスを蹴った
4)相手の足に当たらないよう浮き上がるボールだが、さらにリーチいっぱい近くで蹴っているから相手の足は届いていない(エリア内に持ち込めたこのチャンスを大切にする気持ちのこもったプレーだった)
5)中村のドリブルを見て、高原直奏はエリア内で右からゴール正面に入る。二アサイドに来るポールのためだが
6)その外側へ鈴木が来る。最初にFKとなったとき、左サイドから中に向かって歩いていたゆっくりした動きだったのが(しばらく画面から消える)
7)中村のクロスに合わせて走り込んできたときのスピードと落下点へのジャンプの勢いがボールに乗り移っていた。
 もちろん、日本にも補うべき点はまだまだある。
 しかし、動きは速いがキックの不正確なオマーンを見ながら、技術の大切さをあらためて思った。

(週刊サッカーマガジン2004年11月2日号)

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