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日本代表は2部?3部?

 1968年5月に来日したアーセナルは、日本での3試合で、彼らの素晴らしいプレーをみせた。ボールを持てば、ゴールへ向かうイングランドの果敢なプレーは、当時のわたしたちに強い印象を与えたが、対戦した日本代表も、メキシコ・オリンピック直前で、充実した釜本をはじめイレブンの士気も高かった。

 試合のあとで、日本の関係者がアーセナルのバーディー・ミー監督にこういう質問をした。「日本代表も、アーセナルのような立派な相手と試合をしてもらってとても勉強になりました。もし許してもらえるなら、日本チームをそっくりイングランドのリーグに入れてもらい、1シーズン試合をさせてもらえば効果は上がると思うのです。もちろん1部リーグはムリでしょうから2部にでも…」

 これに対してミー監督は、「うん、そういう方法ができればチームにはとてもプラスになり、力もつくと思いますヨ。ただし、イングランドの2部リーグはレベルが高いから、このチームなら、3部ぐらいが、いいのじゃないでしょうか」と答えていた。

 日本側からみれば、1部というのはあつかましいから、2部といったのだが、ミー監督は、タフなイングランドの2部では、日本代表にはムリだと思ったらしい。わたしはこの話を聞きながら、彼らの厳しさと同時に、1部リーグと同じように古い歴史を持つ、2部リーグに対する彼らの誇りを知ったように思った。
 そういえば、1989年の2部のリストを見ると、リーグ最終順位の1位にチェルシー(ロンドン)、2位にマンチェスター・シティの名がある。
 かつてのチャンピオンも、弱くなれば2部へ、3部へと落ち、小さな町の小さなクラブも、強化すれば上位リーグでビッグクラブとビッグゲームを戦うことができる。

 早くから、志を同じくするグループが集まり、1部、2部をつくり、入れ替え制をとってきた、厳しく長い伝統が「世界一のリーグ」という誇りを持続している。そんな誇りが、メキシコ・オリンピック前の日本代表でさえ「3部なら」といった答えを出したのだと思う。


(サッカーダイジェスト 1989年「蹴球その国・人・歩」)

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